Fal、評価額160億ドルで13億ドルを調達 生成AI推論の需要拡大
出典: fal.ai

サンフランシスコを拠点とするAI推論サービス企業Falが、シリーズFで13億ドル(約2,100億円)を調達し、企業評価額は160億ドル(約2兆5,000億円)となりました。4月の評価額80億ドル(約1兆3,000億円)から倍増しており、同社はシリーズEとFを合わせて16億5,000万ドル(約2,600億円)を調達したと発表しています。学習済みモデルを動かして画像や動画などを生成する「推論」の利用拡大が、同社の事業と資金調達の背景にあります。

Falの評価額は4月から倍増

シリーズFはBessemer Venture Partnersが主導し、NVIDIA、Sound Ventures、T. Rowe Priceも参加しました。Falは同じタイミングでシリーズEとFを公表しており、シリーズEはSequoia Capitalが主導しました。シリーズEの調達は年初に行われました。

Falは2021年に、元Coinbaseの機械学習責任者でOracleのエンジニアだったBurkay Gur氏と、Amazonで開発者を務めたGorkem Yurtseven氏によって共同創業されました。同社はAIの画像、動画、音声モデルをホストし、顧客が利用できる推論基盤を提供しています。今年、Falの年換算売上高は8億ドル(約1,300億円)を超えました。

Falは調達資金を、2027年に向けて同社のエコシステム全体の取り組みに充てるとしています。同社によると、顧客企業は画像・動画・音声モデルを最終成果物の制作工程に組み込んでいます。Falは、拡大する利用を支える推論能力と、今後の開発チームへの投資を挙げました。対象分野には、エンターテインメント、広告、電子商取引、ゲーム開発、マーケティングが含まれます。

学習から推論へ移る計算需要

推論は、学習済みのAIモデルに入力を与え、応答や生成物を得る処理です。Deloitteは、2026年には推論が全計算需要のおよそ3分の2を占めると予測しています。これは2023年の3分の1、2025年の2分の1から増える見通しです。Deloitteは、モデルを訓練する計算需要の伸びが鈍化しても、利用時の処理が増えることで計算需要全体は増加すると予測しています。

Deloitteによると、モデルを学習後に調整する手法や、回答を出す過程で長く推論させる手法も多くの計算資源を使います。同社は、これらの手法と推論の利用拡大により、チップの効率向上を上回るペースで計算需要が伸びると予測しています。また、推論向けチップ市場の拡大と並行して、大規模データセンターや企業内のAI計算設備も引き続き必要になると見込んでいます。

Menlo Venturesが2025年に技術責任者150人超を対象に行った調査では、スタートアップの74%、大企業の49%が、計算使用量の過半を推論が占めると回答しました。同社は、企業向けLLMの支出が2024年11月の35億ドル(約5,500億円)から2025年半ばに84億ドル(約1兆3,000億円)へ増え、モデル開発より本番環境での推論に支出が移っていると報告しています。同調査では、オープンソースモデルを使う企業向けAI処理の割合は13%で、半年間に19%から低下しました。

オープンモデルを動かすFalの基盤

Falは、顧客自身のAIモデルやアプリケーションをGPU上に配備し、需要に応じて実行環境を増減させるサーバーレス基盤を提供しています。顧客はPythonクラスでモデルと必要なハードウェアを指定でき、Falが環境の準備、拡張、ネットワーク、稼働状況の監視を担います。FalのモデルAPIで提供されるモデルも、このサーバーレス基盤上で動作します。

処理単位となる「ランナー」は、モデルを実行する計算インスタンスです。リクエストが届くとFalがランナーを割り当て、空きがなければキューに入れて追加のランナーを起動します。設定により、あらかじめ待機させるランナー数や同時実行の上限などを調整できます。需要が落ち着くと、処理を終えたランナーを停止して計算資源を解放します。

ランナーの起動時には、必要に応じてコンテナを取得し、モデルや依存ソフトウェアを読み込んでからリクエストを処理します。Falは、モデルの重みやコンテナの部品などを複数の階層にキャッシュし、同じ機器やデータセンター内で再利用します。Falのサーバーレス基盤では、既存のHTTPサーバーやコンテナを持ち込む方法と、同社の形式で新規アプリを作る方法を利用できます。

GPU基盤やモデルAPIとの役割の違い

推論基盤は、GPUを用意するだけでなく、モデルを配備してAPIとして呼び出せるようにし、アクセス量に合わせて処理能力を調整するソフトウェアも扱います。推論基盤の機能には、ハードウェア、モデル実行フレームワーク、API連携、リソースの拡張管理があります。Falのサーバーレス基盤にも、GPUの選択、モデル配備、リクエストの振り分け、ランナーの増減が含まれます。

クラウド事業者の基盤では、GPUの利用に加えて、企業向けの管理機能や既存のクラウド環境との連携が選択肢になります。AWS SageMakerはリアルタイム、非同期、サーバーレス、バッチの推論方式を提供し、Google Vertex AIはGeminiとオープンモデルを含む機械学習基盤です。Falでは、顧客が自分のモデルやコンテナを持ち込み、GPU上で実行できます。

推論専用サービスとクラウド基盤の違いは、提供機能の範囲や運用の任せ方にあります。Falではランナーの起動や終了、キュー処理、モデル資源のキャッシュを基盤側が管理し、顧客はモデルやアプリのコードを用意します。DigitalOceanは比較で、サーバーレスによる運用負担の軽減と、専用環境や自己管理による制御の違いを挙げています。