
プレイヤーの行動をNPCの記憶に反映
Atelicoは、ゲーム内のNPC(プレイヤーが操作しないキャラクター)に記憶や動機を持たせる開発者向けツール「Atelico AI Engine」の早期アクセスを、申請制で開始しました。言語モデル、画像生成、音声機能、キャラクターの行動制御を組み合わせ、プレイヤーの過去の行動が後の反応に影響する仕組みを作れます。
たとえば、プレイヤーが前日に剣へ高い額を提示したことを店主が覚え、翌日に値上げする例が紹介されています。固定の会話分岐に沿って返答するだけでなく、記憶をキャラクターの行動にも結びつける構想です。
エンジンはUnreal Engine、Unity、Godotに対応し、処理はプレイヤーの端末上で行う設計です。Atelicoのゲーム『Bobium Brawlers』では、プレイヤーが言葉で生き物を説明すると、ゲームがカード用のデッキと画像を作り、スマートフォン上で動かす仕組みも使われています。
Atelicoが示す実行環境と開発例
AI Engineは言語・画像・音声・行動の各モデルをプレイヤー端末上で動かします。Atelicoは、サーバーを使わず、呼び出しごとの費用やネットワーク遅延がないことも特徴として挙げています。
技術デモ「Generative Agents Realtime Playground」は、20人を超えるキャラクターがいる村をシミュレーションします。Atelicoによると、デモはNVIDIA RTX 3090上でローカルにリアルタイム実行され、元になった研究のデモがゲーム内の1日あたり約500ドル(約7万9,000円)かかったのに対し、実行費用はかかりません。
AI Engineはオープンソースの言語モデルと独自の画像生成技術に対応し、出力をゲームの方針に沿わせる安全機能も備えます。問題のある出力を単に遮断せず、書き換える安全パイプラインも含みます。これらの機能はAtelicoが掲げており、実際のゲームでの挙動や開発者が出力をどこまで制御できるかは、利用例で確かめられます。
NPCの長期記憶を扱う研究例
NPCの記憶では、会話をすべて保存するのではなく、後の応答に必要な情報を選び、整理する方法が研究されています。MOOMは、ロールプレイ会話から物語の展開とユーザーの人物像を別々に要約し、時間の経過や検索頻度を使って記憶を強めたり弱めたりする枠組みです。
MOOMの評価用データセットZH-4Oは、記憶情報を人手で注釈した28件の会話からなり、各会話は平均600ターンです。この研究では、記憶容量の増大を抑えながら、長い会話の要点を応答に使うことが課題として扱われています。
別のNPC対話フレームワークでは、短期記憶を編集可能な知識グラフに、長期記憶をベクトルデータベースに保存します。プレイヤーの入力から意味関係を取り出し、関連する記憶を検索してキャラクター設定と組み合わせ、応答を生成する設計です。このフレームワークは主に会話の一貫性を扱います。
NVIDIA ACEとの実行方式の違い
NVIDIA ACEも、ゲーム内キャラクター向けに音声、知能、アニメーションのAI機能を提供し、クラウドと端末内の両方で動かすモデルを用意しています。Atelicoは複数のゲームエンジン上で動くオンデバイスのツールキットとして提供され、ACEはゲーム開発向けのモデルやプラグイン、SDKを組み合わせて使います。
ACEのUnreal Engine向けプラグインには、外部のNVIDIAサービスと通信する機能と、ローカルで実行する機能があります。プラグインのGPT機能は、同じマシン上で言語モデルにテキストを送り、応答を受け取れます。
ACEのGame Agent SDKは、NPCをゲームの状態や文脈情報、モデルによる行動に接続するためのC/C++フレームワークです。一方、AtelicoはUnreal Engineに加えてUnityとGodotにも対応しています。Atelicoは複数エンジン向けの一体型ツールキットで、ACEはモデルやエンジン向けのプラグインやSDKを提供します。
記憶の使い方と出力制御が焦点
NPCが以前の出来事を覚えていること自体は、分岐会話や評判システムでも表現できます。Atelicoの構想では、記憶を台詞だけでなく、その後のキャラクターの選択や行動にも反映させます。
Atelicoは、ローカル処理によってサーバー費用や通信遅延を避け、プレイヤーのデータを端末内にとどめる設計だとしています。同社は端末での推論がプレイヤーの機器に負荷をかける点にも触れ、クリエイターの同意や事前補償を提案する契約枠組み「Artist Rights Contract(ARC)」を掲げています。
Atelicoは早期アクセスを申請制で提供しており、この仕組みを採用したゲーム名は公表していません。











